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少女が手を一振りすると、指先から光が伸びた。
光は紅く、緋く、触れてはいけない…そんな気がしたが、同時に魅力的だった。
光は地面に当たるとそこで弾け、そのまま花の形に固まった。
少女が両手を広げると、同じ様に周囲にも無数の花が咲いた。
それはとても幻想的な光景。
暗い空ですら彼女に染まっていた。
それを見た少年は今までの悲しみも忘れ、その不思議な力に魅力された。
「これが魔術師の力よ」
少し得意げな少女に少年は尋ねた。
少年はどうしても聞きたかった。
―ボクにもその力は使えるの?―
すると少女は面食らった様子で答えた。
「え?…そうね、頑張ればできると思うわよ?
一応、あなたは才能がありそうだし」
それを聞いた少年の答えは決まっていた。
少年はすっかりその力――いや、少女の虜になってしまったのだから。
「ん?魔術を教えてほしいの?」
希望に満ち、生き生きとした瞳を持った少年に少女は問いかける。
「そうね…いいわよ、あたしがこの街にいる間だけだけど、それでもいいなら教えてあげる」
この言葉に少年は喜んだ。
新たな力が手に入ること、少女にこれからも会えること、どちらも心底嬉しかった。
「じゃあ、第一歩、あたしを『師匠』って呼ぶこと、いい?」
少年は少し、はにかみながら『師匠』と呼びかけると少女は少年よりも顔を赤くした。
「……うっわ、想像以上に恥ずかし」
照れながらも嬉しそうな少女を見ていると、自分の胸の中に温かなものが広がってくる気がした。
そうして少年と少女の、二人きりの秘密の会合は続いたのだった。
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