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あれ?今目の前に居るのは誰だ?
くわえていた棒つきの飴が、口内から滑り落ちて地に触れた。
視線の先に在る男女の背中は、楽しそうに話しながら雑踏を抜けていく
あぁ、確かあの女の方は…松平のとっつぁんの…
消えていく後ろ姿。それを数秒間眺めて、視線を逸らす
報われることなんて願ってもいない
どんなに待ってても、隣を行き交うのは他人の波
身を反転させ、2人とは真反対へ歩き出す
きっと…あのお人にとってみれば、オレもこの溢れ返るヒトの中の1つに過ぎないんだろう
ガサゴソ。左手に握られたビニール袋から取り出した新しい飴
少し舐めたって広がる甘さ
「…やっぱプリン味は最強ですねィ」
本日の歌舞伎町も平和平和
…なにか起きる気配すら、ない
おしまい
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