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彼と再開したのは、つい最近、2週間程前のことだった。
「はぁ!?俺がシュウちゃんを引き取る?」
ある日の午後、母親から一本の電話がきた。
「…そう。シュウちゃん事故に会っちゃって記憶が無くなっちゃったの…。いつまでも病院には居れないし、でもホラ、シュウちゃん身内がいないでしょ?だから一人になっちゃうのよ。鳴海、シュウちゃんの幼なじみだしさ、一緒に…」
「ちょ、ちょっと待てよ!今の俺の暮らしはどうなるんだよ!?幼なじみだから?冗談じゃねえよ!」
シュウちゃんは生まれてすぐ両親を無くし、母方の祖父母に育てられた。成人したころには両祖父母とも亡くなってしまい、身内が一人もいないのは知っている。小さい頃からの幼なじみの俺が確かに一番身内に近いかもしれない。
だけど冗談じゃない。昔からなりたかった作詞家になれ、今じゃ若きホープとまでいわれ期待されてきている。こんなに思い通りにいっている生活を壊したくはない。
「それに…シュウちゃん目が覚めて直ぐに鳴海、あんたを呼んだのよ。お願い。」
シュウちゃんが俺を?何かの勘違いだろう。
俺はシュウちゃんが好きだった。中学校の卒業式の日、意を決して告白した。…結果は惨敗。「そういう対象にはみれない」そんなにはっきりいわれたら気まずくもなる。
結局俺達は中学卒業から今まで、一度も話すことはなかった。
なのに俺を呼ぶなんてありえない……そう思いながらも、もしかしたら、なんて。
「…わかった。」
俺は期待してしまった。
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