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俺は直ぐに車に乗り込んだ。一時間程走らせると数年帰っていなかった自宅に着いた。
「ただいまー、母さん?」
扉を開け、リビングに上がると、部屋も、母さんも、父さんも。昔となんら変わりはなく、どこかホッとした。
「あ、お帰り。シュウちゃんあんたの部屋にいるわよ。」
「あ…うん、わかった。」
久しぶりに面と向かって話すとなると緊張してきてしまう。
ゆっくりと一段一段、階段を上っていき、突き当たりにある昔使っていた俺の部屋の前に立つ。
「――よし…!」
大きく深呼吸をしてドアを開けると、ベットに寝ている人影―――シュウちゃんだ。
「…シュウ、ちゃん?」
遠慮がちに身体を揺すりながら名前を呼ぶと、ゆっくりと、瞳を開けた。
引き込まれそうになるほど綺麗な黒がちな瞳に、つい見とれてしまっていると、不意にソレが俺を捉えて、ドキリと心臓がはねた。
ゆっくりと身を起こして此方に向き直ってきたシュウちゃんは昔と比べて、当たり前かも知れないけど大人びて見えて、心拍数がどんどんあがっていくのを感じた。
「…鳴海、さん…?」
暫く凝視していると、遠慮がちに声をかけられた。
「なに、シュウちゃ…」
――鳴海さん
確かにそう言ったシュウちゃん。覚えてるわけないって分かってても、他人扱いされてる気がして、チクリと心が傷んだ。
「なに?シュウさん」
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