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結局夕飯を実家で食べていき、家に着いた頃には夜の9時はとうにまわっていた。
幸いにも我が家に住んでいるのは俺一人な為、空き部屋が幾つかあった。
シュウちゃんの服などが入っている鞄を持って二階の突き当たりにある部屋の前に行き、鞄を置き、シュウちゃんの方に向き直ると、キョロキョロと辺りを見回していたシュウちゃんとパチリと目が合った。
「ここがシュウさんの部屋、あんまり上等なもんじゃないけど我慢してね?」
シュウちゃんの部屋にはクローゼットと本棚、机位しか家具はまだなくて、殺風景に見える。
「…言いづらいんだけど家ベット寝室に一つしか無くてさ、一緒に寝ることになっちゃうけど…いい?」
「全然大丈夫ですけど…鳴海さんはいいんですか?俺と寝たら狭いんじゃ…」
こういうとき、直ぐに人を気遣ってくれるところがシュウちゃんのいいところだ。
「大丈夫なら良かった…俺なら全然平気だしさ?」
内心一緒に寝るなんて何年ぶりだろう、なんて考えながら答えると、シュウちゃんは嬉しそうに笑った。
数年振りに見せてくれた華のような笑顔はあまりにも可愛くて、昔を忘れて俺にこんな風に笑いかけてくれるなんて思ってもみなかったから。記憶喪失も悪くないな、とか思っちゃったりしてる面もあって。
記憶喪失も悪くないなんて思っちゃう俺は不謹慎だな、なんて我ながら思ってしまい、苦笑いが溢れた。
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