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「なんか最近アイツ、おかしくねぇか?」
神野はグラスから口を離すと唐突に安西に話し掛けた。
二人は行きつけのバーでたわいもない会話をしながら酒を煽っている最中だ。
「ナルのこと?」
安西はアイツと言われて直ぐに一人の人物の顔が浮かび上がった。
「そうだよ、なんか付き合いわりぃしさ…」
「……彼女、じゃない?」
神野が拗ねたように呟くと、安西はからかい混じりに神野に問いかけてみた。
「彼女?ないない、アイツが一人の女を特別視するなんてありえないね。」
神野は高校時代の新山を知っているからこそ、ありえないと思った。高校時代、新山はそこそこ…いや、かなり女子に人気があった。あの頃だけで経験人数は二桁に達していただろう。しかし新山は彼女を作ろうとはしなかった。理由は「飽きるから。」だそうだ。
「わっかんないよ?ナルも大人になったのかもね…。……そうだ!ねえジンジン、ニイ家行ってみよっか!?」
「……行ってみっか。」
何時もなら安西の発言など聞く耳を持たない神野も、好奇心に負けたのかグラスに入っているワインを一気に流し込むと財布と上着を持ち、早々に立ち上がった。
「ちょ、ジンジンお金は?もう!あ、おいてくなよー!」
安西は神野の分も会計を済ませると足早に店を出て神野と共に丁度通りかかったタクシーを止め乗り込んだ。
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