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目の前には、黒ずくめの怪しい人物が二人いた。
(俺としたことが…ここまで近寄られるまで気づかなかった!?)
ただ者じゃないと、ルーディは警戒した。
「ー生きていたか」
黒ずくめの一人が低い声で発した。
「…まぁな」
ルーディもわざと低い声で短く答えた。
「先輩…どうしますか?やはりー」
もう一人の黒ずくめが、声を出した。
会話からして、先輩後輩の間柄だと言う事が分かったが、真っ当な組織ではないと言う事もルーディは理解した。
(静寂の祠には確かに何かある?)
ルーディがそう心で呟いた時に、場違いな声が響いた。
「ちょっと、あなた達ですか!!私の散歩コースを壊したのはッ!?」
ルナはかなりのお怒りのようだったが、黒ずくめを刺激するには十分過ぎた。
「…まずいッ!」
ルーディは声と同時に銀の剣を抜き放ち、ルナの前まで跳躍して空を切った。
その瞬間、何もない筈の空から金属音が鳴いた。
「…ほう。今のを弾くか…気をつけろよ」
黒ずくめの先輩の方が感嘆な声を上げて、後輩に注意を呼びかける。
ルーディの背後では、え?と言う声が聞こえていた。
「…厳しいか?」
ルーディは自分に聞こえる程度の声を出したが正直な所…
ルナを守りながら、黒ずくめと戦うのは、かなり分が悪い賭けになりそうだった。
「ならばッ!」
と、力強く息と共に声を吐いて、黒ずくめの後輩に向けて高速の斬撃を放つ。
ルーディは先に片付けれる方から攻めるべきだと判断したからだったが…
「…甘いですよ」
黒ずくめの後輩は冷たい声を発して、いつの間にか取り出した剣で簡単にルーディの剣を受け止める。
その瞬間、ルーディは半歩下がって下からすくい上げるような斬撃を放つが…
「黄泉の歌声ッ!!」
黒ずくめが言葉を吐いた瞬間、ルーディは突然生まれた暴風で吹き飛ばされた。
「へぇ…黄泉の歌声を近距離から喰らって死なない人間は久しぶりですね。先輩はどう思います?」
ルーディはよろけながらも、立ち上がった。
しかし状況は圧倒的に不利だった。
(おいおい…嘘だろ!力ある言葉による術式…『言霊』の能力者だとッ!?)
ルーディは心底…嘆いた。
現代の魔術と言われる言霊の使い手が相手だからだ。
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