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「お疲れさん!」
小太りの優しそうな男性が景気よく声を上げている。
緑一色のダボダボの洋服を着ているが、よく見ると緑色の上着の胸辺りにロゴらしきマークが刻まれている。
「ルーディ君いつもいつも悪いねぇ。帰ったら親父さんにもよろしく伝えてよ」
「はい。エラールさんからの伝言として伝えときますよ」
ルーディと呼ばれた黒髪の青年は抑揚がなく、淡々と答えた。
全身黒で固めた服を着ている。
違う所と言えば、腰に差した銀の剣と左腕につけている紫のガントレット。
そのガントレットは複雑な模様を刻み、独特の雰囲気を持っていた。
その上から赤茶色のマントを羽織っている。
顔立ちは一般的に言えば、強面だろう。
「兄さん!駄目だよ!僕達のお店のお得意様だよ?もっとしっかり挨拶しなきゃ」
ルーディの弟のエディアが兄を諫めるように言葉を発した。
エディアはルーディと同じ黒髪なのに、大きな瞳に小動物を思わせる愛らしい顔立ちだ。
金色の金具で止められた灰のマント。
その下には、白の上下を着ている。
胸元には、大きな黒のリンゴをモチーフにしたアクセサリーを身につけていた。
性格も服装も全くの正反対だが、仲は良い。
エディアの胸飾りは以前、兄のルーディが誕生日プレゼントで贈ったものだ。
「ああ。分かってるさ。だからこうして、敬語を使って愛想も良くしているじゃねぇか」
「兄さん…愛想って人当たりがいいって意味だよ?敬語は愛想じゃないよ!」
愛らしい顔の中にある眉を跳ねて、ルーディに更に食いつく。
「まぁまぁッ…相変わらず仲が良いのか、悪いのか分からないね。君達は」
「普通ですよ」
ルーディが抑揚なく発して、またエディアが食いつこうとしていたがー
「ではエラールさん何かありましたら、またルール商店へ連絡下さい」
ルーディがそう言って、エディアを遮った。
「分かったよ。また何かあれば、頼むよ。しかし今回は本当に助かったよ。じゃあ…帰る時は気を付けるんだよ?」
ありがとうございますと、相変わらず波がない感情で発した。
「ほら…エディア行くぞ!」
ルーディはエラールに会釈してから反転し、足を動かし始めた。
その後ろではエディアがエラールに声をかけて、兄さん待ってよと走り出していた。
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