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ー深夜。
宿に泊まっていた客は皆、寝静まっている時刻。
そんな真夜中の宿から、一人の男性が気配を殺して姿を現した。
真っ黒な髪に紫のガントレット。
闇の中で時折、月の光に照らされて銀の剣が輝く。
ルーディだ。
いつも一緒にいるエディルは宿の部屋で寝ているのか、ルーディは一人だった。
「…さて」
小さく呟いて、周りを気にしながら足を早める。
ルーディの目的地は、静寂の祠だ。
(…すぐに動けなかった事が凶となるか?)
心の中で、自分に問いかける。
淡々とした様子からクールな印象を持たれやすいが、ルーディは熱血漢でもある。
晩御飯の時に助けを求めた女性の力となるべく動いているのだ。
とは言え、場所が場所なだけに…
すぐに行動が出来なかった。
なにせ、エディアが一緒にいたのだ。
自分の弟に危険が迫る可能性がある所に連れて行く訳にはいかない。
ールーディが動けばエディルもついて来る…だからエディルが寝るのを待って行動を起こしたのだ。
足をさらに早めて、ルーディは目的地の静寂の祠へと急ぐ。
ここからだと、大人の足で一時間とかからない。
「…本当に化け物が住んでいるなら…いや、化け物は住んでいないと信じるしかねぇか」
そう、ただの迷子なら救いはまだあるからと考え呟く。
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