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祠と言うか洞窟と言うべきか…
ルーディはかなり進んでいた。
道が一本道だったから、かなり早いペースでここまで来る事が出来た。
しかし、まだ子供の姿は見当たらない。
ーそんな中、カツ…カツと石を踏みつける音が聞こえてきた。
「…もしや?」
と、ルーディは声に出すが…緊張が身体を支配していた。
剣の柄に手をかけて…様子を窺う。
…カツ…カツ…
音だけが辺りを支配する。
重い空気。
ルーディは息苦しさを殺して、ゆっくりと近づいていく。
ーどのくらい進んだか分からないが、松明の光に照らされて何かが飛び出してきた。
「ッ!?」
ルーディは咄嗟に剣を抜き放ち、構えたが…そこにいたのはー
「あら?こんばんは。お散歩ですか?」
などとふざけた事を言う女性が立っていた。
「…………」
ルーディは無言で目の前の女性を見つめる。
純白のドレスの上から青いレザージャケットを羽織った、なんとも奇妙な服装の女性だ。
松明をゆっくり動かして、その女性の顔を見る。
透明感がある白い髪を肩まで伸ばし、透き通るような綺麗な肌。
瞳は薄い青を帯びて、恐ろしいくらいに整った顔をしている。
本当に人間か?と、ルーディは疑いたくもなったが…
現実の世界で、天使や妖精は存在しない。
ー存在しないはずだったが、目の前にいる女性は明らかにそれほどの美貌を持っている。
男ならこれだけの美貌の持ち主を口説きたくもなるだろうと、ルーディは内心思っていたが…最後にこう付け加えたー
(こんな真っ暗な闇の中じゃなければな)
と。
「…あんたは?迷子か?」
ルーディはもしかして、助けを求めてきた女性の子供が目の前の女性なのではと切り出してみた。
と、言うよりこんな場所で偶然散歩するはずがない。
なら、そう考えるのが自然だった。
「私ですか?私はルナ。迷子…じゃないかな。普通の散歩ですよ散歩!あなたも…散歩じゃ?」
「こんな洞窟で散歩するヤツなんていねぇだろ!」
ルーディは即答したのだが…
「はぁ…そうですか?あなた、変わってますね」
と、にこやかに笑みを浮かべて返すルナ。
(変わってるのはお前だろうが!)
ルーディは内心そう思ったが、とりあえず無視した。
ー無視しないとまた疲れそうな気がしたからだ。
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