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『ありえない事はありえない』
この言葉はきっと二次元の話しだと思っていた。
そう…あんな体験をするまでは。
私、美月桜(みずきさくら)高校一年生。
ごくごく普通の女の子。
父も母も共働きで二つ上に兄が居る。
私には、似合わない出来のいい兄だ。
今日も、いつもの様に自転車で通学。
その通学中に思わぬ出来事に遭遇した。
『言ってきます。』
『行ってらっしゃい。気をつけてね。』
母が、台所から声をかけた。
『あれ?お兄ちゃんは?』
いつもなら、食卓でご飯を食べてるのに今日は見当たらない。
『お兄ちゃんなら部活があるから朝早く出かけたぞ。』
新聞を読みながら父が言った。
『今日は、早く帰ってきてね。』
『あぁ、分かってるよ』
父もカバンを持って玄関を出て行った。
『帰り寄る所あるの。少し、遅くなるから』
そう言って私も、玄関を出た。
キーンコーンカーンコーン。
チャイムが鳴り響く教室。
授業も終わり私は、急いで教室を出た。
近くにある神社に寄るために。
そこは、九狐尾(クミホ)の言い伝えがある神社だ。私も、あまり詳しくは知らない昔話がある。
魂と言うモノを取られた九狐尾が怒り、村人の首を切り落とし見せ物にした言い伝え。その、九狐尾の魂が眠る神社。
『どうして、此処に来ると胸が痛いんだろう?』
小さな頃から此処に来ると胸が痛かった。
おまけにここ最近、神隠しにあう女の子が多い。
数日後、遺体だけが出てくる。周りの大人達は近寄りもしない。
九狐尾の祟りだと言う大人も多いのだ。
受験を控えた兄にお守りを買って絵馬を書いた。
ガラガラ―パンパン。
『お兄ちゃんが無事に受験合格しますように。』
手を合わせお願いした。
『さて、帰るとするか』
私は、自転車に乗り自宅に急いだ。
その時、何も知らず自転車を走らす私の前に子狐が飛び出してきた。
キキキ―ッ………
『お願い間に合って!』
私の願いも虚しく子狐をはねてしまった。
自転車を放り投げるように降り、子狐のもとに走った。
『お願い目を開けて!』
子狐はピクリともしない。
私は子狐を抱え、なぜか神社に向かった。
『お願いします。この子を助けてください。』
なぜ、神社に向かいお願いしたのか自分でも分からなかった。
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