†序章†

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「ねぇ、ハルちゃん。お願いがあるんだけど」 弟の侑が上目遣いで見上げてくる。 男にしては大きく黒目がちな瞳は、濡れたように潤んでいる。 「な、何?」 俺は警戒しながら、問いかけた。 今までの経験上、侑がこんな顔をする時はろくなことがない。 侑は俺の双子の弟だ。 二卵性だからか、俺と侑は似た所がまるでない。 身長も俺より10センチは低く、体つきも華奢だ。 濡れたような艶やかな漆黒の髪と瞳を持つ日本人形のような弟は、誰が見ても文句なしに可愛い。 ……ただし、外見だけは。 「あのさ、僕と一緒の学校に転校して欲しいんだけど」 「はぁ!?」 俺は驚きのあまり、開いた口が塞がらなかった。 (コイツ、寝ぼけてんのか?) 侑の通っている学校は、偏差値の高い私立校だ。 それに比べ、俺はこの辺りの不良がたむろするような三流校。 まず編入試験に受かるわけがない。
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