245人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ、ハルちゃん。お願いがあるんだけど」
弟の侑が上目遣いで見上げてくる。
男にしては大きく黒目がちな瞳は、濡れたように潤んでいる。
「な、何?」
俺は警戒しながら、問いかけた。
今までの経験上、侑がこんな顔をする時はろくなことがない。
侑は俺の双子の弟だ。
二卵性だからか、俺と侑は似た所がまるでない。
身長も俺より10センチは低く、体つきも華奢だ。
濡れたような艶やかな漆黒の髪と瞳を持つ日本人形のような弟は、誰が見ても文句なしに可愛い。
……ただし、外見だけは。
「あのさ、僕と一緒の学校に転校して欲しいんだけど」
「はぁ!?」
俺は驚きのあまり、開いた口が塞がらなかった。
(コイツ、寝ぼけてんのか?)
侑の通っている学校は、偏差値の高い私立校だ。
それに比べ、俺はこの辺りの不良がたむろするような三流校。
まず編入試験に受かるわけがない。
最初のコメントを投稿しよう!