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柔らかな、そして甘い唇がそっと触れ、ゆっくりと離れていく…そんな夢を見た。
目覚ましの音が微かに聞こえた。
止めようと手を伸ばすといつもの場所に時計は無く、代わりに小さな箱と手紙。
身を起こそうと動くと胸の上に優しい重みを感じた。
「ぅ、ん……」
一瞬、起こしてしまったかと思った。
規則正しい寝息が聞こえる。
探していた目覚まし時計は俺の腕の中で眠る愛しい彼女が何故か抱き締めていた。
「なんでこいつ時計を抱いてるんだ?」
彼女の瞼がゆっくりと開き、まだ眠そうな瞳と目があった。
「おはよう、月子」
額にキスをすると恥ずかしそうにでも嬉しそうに微笑んだ彼女に今度は唇にキスをした。
「おはようございます、一樹さん…」
「月子、なんで時計を抱き締めてるんだ?」
秘密です。と笑う月子を抱き寄せ問い詰める。
「なんだよ、教えてくれてもいいだろ?」
「ボードの上の手紙を見てください。その後に教えます」
言われるままに俺は先ほど見つけた小さな箱と手紙を手に取った。
手紙には『Happy Birthday』とピンク色のペンで大きく書かれ、その下に『4/19 大好きなあなたに私からお祝いのプレゼントとキスを贈ります』
そうか夢じゃなかったのか…。
「お前、俺が寝てる時にキスしたな?起きてる時にしろよ」
「だ、だって…恥ずかしい…」
俺の腕の中から逃げようとする月子を引き寄せる。
「お前からキス、してくれよ…」
月子はしばらく、真っ赤な顔をして唸っていたが観念したのか俺の肩に手を置いた。
「目…閉じてください」
目を閉じるとあの時と同じ、柔らかな、そして甘い唇がそっと触れた。
ゆっくりと離れていく唇を引き寄せ俺からキスをする。
離れると真っ赤な顔をした月子の小さな声が聞こえる。
「誕生日おめでとうございます…」
俺の腕の中にいる愛しい存在。
その存在が何よりのプレゼントだ。
「で、なんで時計を?」
「日付が替わった瞬間にキスのプレゼントをあげたくて時計をずっと見てたんです」
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