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凛と的を見つめる光を宿した強く綺麗な瞳。
その立ち姿は弓道場に咲く、一輪の花…。
放たれた矢は吸い込まれるように的の中心を射抜く。
「綺麗だね」
つい声が出てしまった。
「部長?!来てたんですね」
一瞬驚いた表情をしたけれど、僕だと分かると頬を染めて僕の大好きな笑顔をくれた。
「ふふ、びっくりさせちゃった?」
「…ちょっとだけ、一人だと思っていたから…でも部長で良かったです」
照れて目を伏せる彼女が少し大人びて見えた。
「さっきから気になってるんだけど、僕はもう部長じゃないよ。それに、今二人だけだから…ね」
「…はい…誉さん」
抱き寄せて腕の中に閉じ込めた。
そして額にキスをする。
「宮地君が見たら『神聖な道場で!!』って怒鳴りそうだね」
「そうですね、ふふ」
「そうだ、僕に用って何かな?何か困った事でも…っん」
突然唇に触れた柔らかで甘い彼女の唇。
ゆっくりと放れていくそれが名残惜しくて強く抱き締めた。
「どうしたの急に、君からキスしてくれるなんて」
「今日は誉さんの誕生日です。今のキスは、私からのプレゼント…です」
耳まで真っ赤にしてもう一度キスをくれる。
「ありがとう、すごく嬉しいよ」
「誕生日、おめでとうございます…」
最高のプレゼントをありがとう。
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