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君と初めて出逢ったのは、誰もいない星月学園の保健室。
風に揺れる真っ白なカーテンがまるで、聖母マリアのベールの様だった。
「6月の花嫁…か」
「郁?」
『郁の誕生日に結婚式を挙げたい』
彼女の可愛い我が儘は僕にとって最高の喜びだった。
それと同時に胸に宿った不安。
結婚式のパンフレットを見ながら呟いた言葉。
6月の花嫁は幸せになれるって言うけど、本当に…そうだろうか。
「君は…、僕と居られて幸せ?」
僕が彼女を幸せにできるのだろうか?
僕といることで彼女を傷付けてしまわないだろうか?
そんな思いからした唐突な質問に、彼女は真っ直ぐな揺るぎの無い瞳で僕に言った。
「当たり前だよ。私は郁の隣に居られて、郁が隣に居てくれて幸せだよ」
強い瞳、君はあの頃に比べて…いや、あの頃から強かった。
僕がどんなに突き放しても君は僕の隣に居てくれた。
「郁は?郁は幸せ?」
僕は自分の気持ちを偽ってきた。
でも君にだけは偽り無く素直な気持ちを伝えよう。
「僕も、月子と居られて幸せだよ…」
抱き締めて、キスを贈ろう。
愛しい君へ、僕の一番嫌いな言葉をあげるよ。
「愛してるよ、僕の月子」
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