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この歳になると自分の誕生日なんて忘れてしまうものだ。
誰かに“おめでとう”なんて言われてやっと思い出す。
でも今年はちゃんと覚えていた。
お前がいたから…。
「もうすぐ琥太郎さんの誕生日ですね。プレゼントは何が欲しいですか?」
誰かが誕生日を祝ってくれる。
そんな些細なことがこの上無い幸せだと感じる。
「特に欲しいものは無いかな…」
もう俺は十分過ぎるほどたくさんのものをお前から貰った。
幸せな時間を、幸せな気持ちを…。
「何か無いですか?物じゃなくても、私にして欲しい事でもなんでもいいんですよ?」
そうだな…今俺がお前に望むものがあるとすれば…。
「俺と、結婚してくれ…」
「え…?」
きょとんとしたまま固まったお前を抱き締めてもう一度…。
「月子、俺と結婚してくれないか…」
今俺がお前に望むもの。
それはとても贅沢でこの世のどんなものよりも価値の有るもの。
“夜久月子”そのものを俺に、ください。
月子は涙を流しながらも、花の様な笑顔で返事をくれた。
「はい…」
この日咲いた俺だけの10月の花…。
今年の誕生日プレゼントはとても贅沢な、俺の宝物になった。
「HappyBirthday、琥太郎さん」
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