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携帯電話を片手に時計を気にしながら電話をかける。
もうすぐ日付が替わる。
早く貴方の声が聞きたい。
彼女から電話がくるのはなんとなく分かっていた。
日付が替わる5分前、携帯が鳴る。
この音は彼女の着信を知らせる音。
僕はすぐに電話に出る。
「はい、どうしたんですか?先輩」
電話をかけてきた理由は分かっている。
でも、分からないフリを、忘れたフリをした。
『あのね…もうすぐ日付、替わるでしょ?』
「そうですね。あと…5分程で19日も終わりです」
そう明日は12月20日、僕の誕生日だ。
もうすぐ日付が替わる。
だから、彼女が電話をかけてきた理由が分かる。
『あと…1分』
小さな声で、僕の大好きな声でカウントダウンが始まる。
『あのね、私…梓君の事大好きだよ。だから…』
0時、時計の長針と短針の合わさる音が静かな部屋にいつもより大きく聞こえた。
僕は彼女に、彼女から一番最初に聞きたかった…あの言葉を…。
『生まれてきてくれてありがとう…誕生日おめでとう』
電話越しでよかった。
僕は多分、これ以上にないほどの笑顔だったに違いない。
「ありがとうございます、先輩。先輩に一番に祝って貰って嬉しいです」
『一番におめでとうって言えてよかった。プレゼントも用意してあるの』
「そうですか、楽しみです。あぁ、いいことを思い付きました」
今すぐに貴女に会いたい。
貴女もそう思ってくれてますか?
「今から、先輩に会いたいです。抱き締めて…キスをしたい」
愛の言葉なら電話でも伝えられる。
でも貴女を抱き締めるのも、キスをするのも実際に会わないとできない。
だから…
「大好きです、先輩。ねぇ…続きは、また…」
今から会いに行きますから…待ってて下さい。
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