いちごたると

2/2
前へ
/33ページ
次へ
『美味しい!凄く美味しいよ!!』 そんな言葉を期待して初めて一人で作った苺のタルト。 結果は……大失敗。 エプロンなんて意味が無いくらい粉を被って、頬には苺の果肉、目の前には努力の果てに出来上がった形歪な苺のタルト。 「やっぱり錫也に手伝って貰えば良かった…」 大好きな彼の為に一人で作ろうと意気込んで、空回りして大失敗。 こんなところ見られたくない…。 早く片付けなくちゃ…。 と、思ったけれどもう遅かった。 「どうしたの…?これ…」 「よ、羊君!?み、見ないで!!」 急いでキッチンから押し出す。 後ろ手にドアを閉める。 恥ずかしくて涙が出る。 「ど、どうしたの?月子?」 「きょ、今日…羊君の、誕生日だから…ケーキを作ろうと思ったの」 零れる涙を拭いながらキッチンの惨状について話した。 「それで、月子は真っ白になってるんだね」 「ごめん、ね…うまく出来な…ッ」 「いいよ…僕は月子の気持ちが、嬉しいから…」 ふんわりと抱きしめられる。 頭を撫でられ涙はいつの間にか止まっていた。 「ねぇ、月子が作ってくれたケーキ、食べたいな」 「ぇっ、でも失敗しちゃ…」 「関係ないよ。ねぇ、食べよ。そうだ、僕、月子に食べさせて欲しいな。もちろん、あ~んって言ってね」 「えぇ!?」 「僕の誕生日だもん、やってくれるよね?」 こんな笑顔で言われたら断れない。 私は小さく頷いた。 「羊君、お誕生日おめでとう…」 「ありがとう、月子。愛してるよ」 苺タルトの味がどうだったかは、秘密…。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加