桜、ツーショットで

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春風が眠気を誘う。 放課後の教室、窓際の自分の席。 クリーム色のカーテンがヒラヒラと揺れる。 『寝みー…』 大きな欠伸、自然と閉じてくる瞼。 いつの間にか意識を手放していた。 「…太、哉太」 「…んだよぉ、ぅるせーぞ錫也…」 「何時だと思ってるんだよ」 「ん~、げっ!真っ暗じゃねーか!!」 窓の外は真っ暗になっていた。 「月子はとっくに部活も終わって帰ったみたいだぞ」 「そっか、そんじゃ俺らも帰るか」 大きな伸びをして立ち上がり鞄を持ち上げると一枚の写真が落ちた。 「?なんだ…」 その写真は満開の桜の木の下で月子と二人で写っているものだった。 写真には『Happy Birthday to KANATA』、裏には『今夜7時に桜の木の下で待ってる』と書いてあった。 俺は慌てて時計を見た。 7時はもう過ぎていた。 「悪い!錫也、先に帰っていいぞ」 「えっ!?おい、哉太?」 俺は錫也を残して教室を後にした。 「月子!!」 桜の木の下には制服姿の月子が立っていた。 風に吹かれた桜の花弁と一緒に月子の髪がサラサラと流れる。 「遅刻」 頬を膨らませ怒っていることを主張する月子に「悪い」と一言謝罪した。 「起こしてくれれば良かったのに」 「哉太気持ち良さそうに寝てたから…、それに…」 恥ずかしかったから、頬を赤らめて俯いて俺の制服をギュッと握る。 「あの写真、去年の俺の誕生日に撮ったんだよな」 あの時は転入してきたばかりの羊と喧嘩して、俺達を仲直りさせる為に錫也と月子が俺の誕生日に合わせて花見を企画して…。 「あの時、羊がお前とツーショットで写真撮るって言い出して」 「哉太が張り合って羊君を押し退けて私と撮ったツーショット写真」 あの時はまだ“幼馴染み”という関係で、その関係が壊れるのが怖くて羊を拒絶した。 でも、俺達は“幼馴染み”から“恋人”に関係を変えた。 「ねぇ、写真撮ろうよ」 記念にっと微笑んだ月子が俺の隣に寄り添った。 そんな月子に微笑み返し、カメラを構える。 「哉太…これからもずっと、一緒にいようね」 「あぁ」 シャッターを押した瞬間、頬に触れた柔らかい感触。 それは月子の唇で、今の瞬間はバッチリカメラに残ったわけで…。 「Happy Birthday、哉太」 いたずらっ子みたいな月子の顔が真っ赤だったのは、言わないでおく。
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