きっかけ

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きっかけ

入社して2ヶ月がたった頃の事だった。 私はなんとか会社の仕事を終え、家に帰るため会社から歩いて5分の駅に向かった… ここから2つ電車を乗り換え一時間半かけて帰るのだ。足取りはいつもに増して重い…。 はぁ… 暗くて人気のない駅に着いたが、田舎の小さな駅、すぐに電車の来る気配もなく 私は改札の時刻表に目をやった。 その時不意に誰かに話しかけられた。 「今から帰りなん?!」 誰っ?と振り返ると 作業着姿のままの旦那が立っていた。片手にはワンカップのお酒…。 仕事を終え、駅前にある小さな酒屋さんに仕事仲間の人と寄った際、私を見かけ声をかけてきたみたいだ。 「はい、そうです…。」 そう答えながらこの人は確か加工場の…名前なんだっけ? と疲れた頭の中で考えていた。 そんな私の事はおかまいなしに旦那は早口で話し始めた。 「なっ!今から飲みに行こや!俺今から家帰ってすぐに着替えてくるから先に天王寺行って駅前の陸橋で待ってて。絶対待っててや!」 旦那はそう言うや否や私の返事も聞かず 走り出した。 「えっ?!ちょっ…待っ…」 …えーー! …… どっ…どうしたらいいん…この状況。 でもきちんと断ってないし……あの人が天王寺まで行って私がいなかったら会社で顔会わした時気まずいだろうし…それにしてもムチャクチャやわ…。 私は急な誘いを断る暇も与えられず、律儀な性格の為、無視してすっぽかす事も出来ず…結局天王寺で途中下車した。 天王寺の駅前は帰宅する人や今から遊びに行こうという人々でごったがえしていた。 …心細さを感じながら陸橋の真ん中で私は旦那を待った。 ほんまに来るんやろかあの人…。それにしても大阪の人ってほんま不躾というか …私あの人の名前も覚えとらんのに…。 関西に出てきて六年の月日が経とうとしていたが、まだまだ関西人の乗りについていけない私だった。
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