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居心地の悪さに耐えかねて帰ろうかと駅に足を向けた時向こうからバタバタと走って来る人影が…
「ごめんやで~遅くなって!でも待っててくれたんや~。めちゃ嬉しいわ。それよりどこ行こか~?取りあえず飯やな。」
着いたそうそう一方的に話す旦那。
お世辞にもお洒落とはいえない出で立ちの四十前の男。
…なんだかなぁ。
「そんじゃ地下に行こか~。」
私は旦那の勢いに押されながら後をついて居酒屋風な店に入った。
「あっ、お姉さん!…俺はとりあえず生中 …えっとみちるちゃん(仮名)は何する?」
「えっ…えっとじゃあ…酎ハイの青りんごで…」
…みちるちゃんって
…なんで私の下の名前まで知ってるんやこの人。
「ネェネェ、みちるちゃん!なんでうちの会社入ったん?うちの会社変わった会社やろ~社長も変わってるし…兵庫からワザワザ来てんねやろ~。部長にいじめられてへんか~?あの人きっついからな~。」
相変わらずの勢いで 旦那は話し続ける。
「会社に入ったのは大学の友達の紹介です…仕事しないと生活できないから友達の話しに飛びついたんですけど…こんなに田舎とは…。」
苦笑いしながら私は会社に入った経緯や 今の会社の事について話し始めた。
14も年上という事で何のてらいもなく私は自然に旦那相手に自分の事を話し始めていた。
会社に入る前から誰にも泣き言も言えず孤独だった私の話を主人は良く聞いてくれた。
朝顔合わすだけの良くも知らない14上の会社のおっちゃん相手に不思議と居心地の良さを感じた。
「あっ…あの私すいません…名前…まだちゃんと覚えてなくて…なんて呼べばい いですかっ?」
店に入って一時間もたとうというのに名前を聞いてない事に私は気付いた。
「ははっ…そやわな~。会社で朝顔合わすだけやもんな~。
俺、柴田(仮名)ピチピチの38ですっ。
…それよりみちるちゃん良く食べるね(笑)」
柴田さんはお酒ばかりであまり食べようとしないので私は自然と、パクパクと恥ずかしげもなく居酒屋メニューを食べていた。
久しぶりに人とご飯を食べる楽しさに、私は良く食べ良く喋った。
「この後どうしよっか…。なんかみちるちゃんといるとめちゃ楽しいわ。このまま別れるんは寂しいな。」
いい感じにお酒も回った頃柴田さんは少し真面目な顔をしてそう口にした。
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