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気のゆるみ
借金で痛い目にあった私だったが、大金の支払いでもともとあったキッチリしたお金の価値観が麻痺してきていた。
私はすべての借金を返済して少し家庭に余裕ができた頃、専業主婦で家で息子を見ながらも、またも主婦業だけの平凡な生活を繰り返す自分を持て余していた。
私はずっと好きな事を仕事にしたい!と昔から思ってきたのに…いつも中途半端で、いつのまにか生活に追われ、子供や生活、借金返済の為にあくせく働き、家事をしてきた。
もっと私に出来る何かがあるはずなのに。
そんな時、私の心の不満につけ込むようにピンポーンと玄関がなりました。
ちょうど息子は風邪をひいていて微熱もあったので、イライラしながらインターホンに出ると
「着物の着付けの無料体験についてお知らせがてら回らしていただいいてます。」とはんなりした声がインターホンごしに
…。」
着付けか…
私は前々から着物に対して興味もあったが習い事など子育て優先で考えた事もなかったし、着物も一枚も持ってなかったので
「子供も風邪ひいてますし…お話は聞けないです。」
と答えた。
それでも相手は上手だった。こう切り替えしてきた。
「えっ!子供さん大丈夫ですか?良かったら子供さんの顔だけでも見せていただいけません?あのっ、着付けといっても無料体験のチラシをお渡しするだけですし。」
普段家にこもって家事育児であまり人と話す機会のない私は、相手の優しそうな声につい玄関のドアを開けてしまったのだ。
これが訪問販売のテクニックだとは知らずに…。
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