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「……って、これじゃ『あたしは幸せじゃないのよー!』って言ってるだけじゃん!」
ぐしゃぐしゃぐしゃ。
あたしは机の上の原稿用紙をぐしゃぐしゃにしてごみ箱に捨てた。
あたしの仕事は小説家。
まだまだ駆け出しだけど、やっと連載が決まったんだ。
「くぅ~……」
長い茶髪のポニーテールをたらし、あたしは机に伏せた。
女性向けの小説を書こうと思ったけど、中々まとまらない。
初っ端スランプ……。
コンコン。
「はいよ~」
あたしは部屋をノックされ、気怠そうに返事をする。
ガチャリ。
「何という変な声出してんだよ」
あたしの返事に不満そうにして部屋へ入ってきたのは、兄・桧山 孝介(ひやま こうすけ)。
あたしより、3つ年上。
一人娘の伊智加(いちか)を溺愛している。
短く切り揃えた黒い髪に中背で少しガッチリしてる。
お世辞にもイケメンとは言えないけど、人のよさそうな雰囲気はある。
……まぁ、実際に人がいいんだけどね。
奥さん……あたしから言えば義姉は結婚して直ぐに亡くなった。
大恋愛の末、ゴールインした二人だったからこそ余計にお兄ちゃんは娘を溺愛してるのかもしれない。
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