プロローグ。

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*** あたしはゆっくりと銭湯へ向かった。 鍵を開け中に入ると独特の匂いがする。 あたしはこの匂いが好き。 勿論この空間も好き。 だだ広くもなくこじんまりとした銭湯だけど小さい頃から身近にあったからかわからないけど、ホッとするんだ。 「あ、お兄ちゃん急いでたから準備まだだよね。 準備しなきゃ」 あたしんちの銭湯は16時オープン。 それまでに用意を済まさなきゃならないんだ。 あたしは男湯へむかった。 ガララッ。 静かに中に入る。 「……え?!」 あたしは自分の目を疑った。 何と浴槽に当たり前のように一人の男性が入っている。 「ふへ?」 あたしの声に反応し男性は振り返った。 「キャーッ!」 思わずあたしは叫んだ。 「あっ、ちよっ! まって! 叫ばないで!」 ザバン! あたしの悲鳴に驚いた男性は立ち上がった。 「ひゃあっ!」 アレが丸見えであたしは思わず顔を手でおおった。 「うはっ!」 男性も慌ててアレを隠した。 あたしはあわてふためく男性をそのままにし、浴室を出た。 ……痴漢かしら。 怖いわ……。 警察に電話した方がいいかしら。 いや、先にお兄ちゃんに知らせなきゃ……。 でも痴漢がワザワザお風呂の用意してまでのんびりと入るのかしら? 色んな疑問符があたしの頭の中でぐるんぐるん回っている。
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