第一章

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女という生き物の変化は目覚ましい。一年ですから時の流れに関心するしかないというのに、十年以上も前のおぼろげな記憶と、この目の前にいる女性を重ね合わせるなんて、到底無理な話だった。 「私よ、さつき。…えと、永山って言ったほうがわかるかしら?」 「…………………」 彼曰く薄情な私には、しかし名前だけでは思いだせなかった。 ……横で久喜が「さいてーっ!」と彼女を真似ていうことに苛ついたのは私のせいではないだろう。 彼は非常に落ち着いた男であるが、たまにこういうおちゃらけた態度をとる。それがいいという女性もいるのだから、女はわからないというものだ。 「あー……、そうね。あと、クラス委員とかしてたかな」 「クラス委員………?」 そういえば、それは記憶にあるような気がする。確かあまり目立たない風貌で、地味といっても過言ではない服装をしていた。そして、 「眼鏡みつあみ」 である。 遠慮なく隣が吹き出した。 「…………っあまりにも的確で……ちょっと、すごいな」 「その覚え方はなによ……!! ……まあ、あってるけどね!!」 小島……永山本人も盛大に笑った。 .
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