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少し行動範囲を広げれば、新しい出会いなどたくさんあった。
私は新しく出来た男友達との遊びに夢中になり、彼女との大人しい遊びに見切りをつけて、彼女と距離をあけた。
悪いという気持ちは、なかった。きっと彼女も同性との交友のほうがたのしいだろうと思っていたし、そもそも二人だけの世界なんて、いつまでもありえるはずかなかったのだから。
そうしてしばらくして、彼女がどこかへ引っ越してしまってからは、私の中から彼女―――「山下恵」という存在は、完全に消え去ってしまった。
子供の思い出などそんなものだろう、そう割りきっていた自分が、一番の薄情者だったのかもしれない。
そして私はただ年を重ね、生きてきた。
埋もれた記憶に彼女がいたことなど、覚えてもいないままに―――………
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