第一章

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今日は小学校時代の同窓会だった。本当は参加するつもりなどなかったが、幹事が仲のいい男で、どうしてもとしぶるものだからこうして出向くことになってしまったのだ。しかしながら、小学校のときの思い出など全くない私が、小学校の同窓会なんて意味があるんだろうか。 (はあ……) こんなことなら会社に残って仕事の続きがしたかった。仕事は好きだ。働いた分だけ成果がでる。目に見える結果が現れてくれる。私が勤めているのが食品会社で、自身が開発部にいるものだから、それが特に顕著であった。自分たちが作った商品が売れる、これがとても嬉しくて、やりがいがあって仕方がないのだ。 (こんなことを思っているから、仕事人間だなんて言われるんだろうな) しかし、仕事にやりがいがないことほどつまらないことはないんじゃないかと、私は思う。生きていくためには働かなければいけない。そのための行動に意義がないなんて、やってられないだろう。 (そう思えば、私は幸せなのかもしれないな) ……歩きながらも仕事のことしか考えていない私は、やっぱり仕事人間なんだろう。 同窓会の会場は、会社から五つ先の駅前にあるホテルだった。 .
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