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こんなにもボーイの声が虚しく響いたのは、きっと後にも先にもこの時だけだろう。
「呼ばれちゃった…」
あたしはそれまでの勢いを失って、力無く言った。
トマトジュースを一気に飲んで、ソファに寄りかかりリュウの顔を見ずに続けた。
「もうちょっと話したかったな…。」
だって、あたしまだリュウの何も知らない。
リュウはきっともうこのお店に来ない。
だから、せめてこの時間だけは目一杯リュウと話したかった。
あたしの本音。
「指名しようか?」
「えっ?」
リュウの思い掛けない言葉に動揺する。
「だから、指名しようか?俺もすごく楽しかったし。」
「えっ?でも、お金掛かっちゃうのに…いいの?悪いよ!」
そんな事を言いながら、この時のあたしはきっと笑っていたに違いない。
「あははっ。どっちだよ!ほんとに面白いね。指名するから、もっと話してよ。」
なんだかもう、胸が一杯で充分だよ…。
他のお客さんに「君面白いね」とか言われてもなんとも思わないのに、リュウに言われると全然違う。
すごく貴重な一言に感じる…。
全然違うの。
うまく言えないけど、リュウの言葉はキラキラしながらあたしの心に降りかかってくる。
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