悲しい残り香

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「ねえ、リュウとあたしが出会ってどのくらい経つんだっけ?」 私は敢えて知らんぷりして聞いてみた。   「もうすぐ一年だっけかな。」 さすがホスト。 やっぱり覚えてくれていた。 これで覚えていてくれなかったら、あたしはきっとへそを曲げていた。 どんな些細な事でも覚えていて欲しい。 でもあたしのワガママや嫉妬や色んな感情を押し付けたら、きっとリュウはげんなりしちゃう。 「只の客が何思い上がってるんだよ?」って思われちゃう。 だから時々、昔のことを忘れたフリして聞いてみるの。 それにちゃんと答えてくれるリュウを見て、安心を得る。 この恋はいつだって不安定。
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