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仕切屋からカードが順に配られ、中央にいらないカードが捨てられていく。
「それとそれもペアじゃわい」
アイドルが、太っちょに色目を使いながらアドバイスをする。やはりこの年齢にはチョンマゲのデブは格好いいらしい。
「有難う、婆さん」
太っちょは軽くウインクをして、アイドルの唇を奪った。
突然の接吻の上、ニヒルな太っちょに見つめられ、アイドルは頬を染めて俯いてしまう。新しいカップル誕生の瞬間だ。
それを遠くから見ていたスターが、指笛を鳴らして祝福した。スターの名に恥じぬ、祝福の仕方だった。
それに乗じて、シズカも訳の分からない咆哮を発し、缶コーヒーを飲むライバルを凝視すると、ニンマリと微笑む。
恐らく彼女なりの求愛行動だが、当然ライバルには通用しなかった。
二組目のカップルが出来なかったことは残念だったが、僕たちは気を取り直して、ゲームを始めた。
ババは僕の元に来た。僕のカードを取るのは、仕切屋だった。
「もっと左がいいんじゃないか?」
一番右のカードを取ろうとしている仕切屋に僕は言った。一番右はババである。
「うーん……。これでいいです」
仕切屋は、透視できるわけでもないのに右へ左へ視線を動かし、結局意地になって、私のババを取った。
「うわぁぁーん、酷いですー」
ババを引いてしまった仕切屋は、どこかのタラちゃんのような声で言った。
「あがりー」
とその次の番で、ボケが上がった。
「じゃ、俺はトイレ行くわ」
ボケはトイレに立つ。その途中で全員の手を見て、彼氏であるツッコミに目配せをして、ババを持っているのが仕切屋であることを教えていた。ツッコミもそれに気付いて、安心して隣の太っちょのカードを引いている。
ボケがトイレへ向かうタイミングで、先生とマシーンが腕を絡ませながら帰ってきた。二人は見つめあっている。
僕はその気持ち悪い光景を目に入れるのが嫌だったので、気にせずトランプを続けた。
空気の読めないスターはまだ指笛を鳴らし続けており、ライバルは相変わらず立ってコーヒーを飲んでいる。
先生とマシーンは目で愛を語り合い、シズカは雄叫びを上げていた。
アイドルは今まで杖に預けていた体を太っちょに傾けている。
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