Kの悲劇3

14/18
前へ
/27ページ
次へ
 仕切屋からカードが順に配られ、中央にいらないカードが捨てられていく。  「それとそれもペアじゃわい」  アイドルが、太っちょに色目を使いながらアドバイスをする。やはりこの年齢にはチョンマゲのデブは格好いいらしい。  「有難う、婆さん」  太っちょは軽くウインクをして、アイドルの唇を奪った。  突然の接吻の上、ニヒルな太っちょに見つめられ、アイドルは頬を染めて俯いてしまう。新しいカップル誕生の瞬間だ。  それを遠くから見ていたスターが、指笛を鳴らして祝福した。スターの名に恥じぬ、祝福の仕方だった。  それに乗じて、シズカも訳の分からない咆哮を発し、缶コーヒーを飲むライバルを凝視すると、ニンマリと微笑む。  恐らく彼女なりの求愛行動だが、当然ライバルには通用しなかった。  二組目のカップルが出来なかったことは残念だったが、僕たちは気を取り直して、ゲームを始めた。  ババは僕の元に来た。僕のカードを取るのは、仕切屋だった。  「もっと左がいいんじゃないか?」  一番右のカードを取ろうとしている仕切屋に僕は言った。一番右はババである。  「うーん……。これでいいです」  仕切屋は、透視できるわけでもないのに右へ左へ視線を動かし、結局意地になって、私のババを取った。  「うわぁぁーん、酷いですー」  ババを引いてしまった仕切屋は、どこかのタラちゃんのような声で言った。  「あがりー」  とその次の番で、ボケが上がった。  「じゃ、俺はトイレ行くわ」  ボケはトイレに立つ。その途中で全員の手を見て、彼氏であるツッコミに目配せをして、ババを持っているのが仕切屋であることを教えていた。ツッコミもそれに気付いて、安心して隣の太っちょのカードを引いている。  ボケがトイレへ向かうタイミングで、先生とマシーンが腕を絡ませながら帰ってきた。二人は見つめあっている。  僕はその気持ち悪い光景を目に入れるのが嫌だったので、気にせずトランプを続けた。  空気の読めないスターはまだ指笛を鳴らし続けており、ライバルは相変わらず立ってコーヒーを飲んでいる。  先生とマシーンは目で愛を語り合い、シズカは雄叫びを上げていた。  アイドルは今まで杖に預けていた体を太っちょに傾けている。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

161人が本棚に入れています
本棚に追加