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ぷつん、と糸が切れて気持ちがはじけた。
あんなにみんなの前で言おうと思っていた言葉達が、
綻んで溶けて消えていく。
今までの自分が、自分じゃなかったみたいに遠くに感じて、
全てがどうでもよくなって、
気づけば夢中でコジを貪っていた。
「な!部長もそうだろっ!」
全てが終わって一息ついた後、自信満々にコジは言った。
俺はキッチンにもたれながら、頭を抱え深いため息をつく。
「…負けました…」
屈服した俺を見て、コジは嬉しそうに笑った。
時計を見るともうすっかり夜も更けている。
扉の向こうのみんなも腹が減って元気が無くなってきてるようだ。
俺は慌てて服を直し食材に手をかける。
「コジも手伝え!」
「は~い♪部長!」
あいつらが我慢できなくなってこのキッチンに乗り込んでくるまであと30分と見た。
がやがや文句を言われる前にさっさと料理を終えなければ。
「…はぁ…」
隣で無邪気に笑っているコジと、まだジンジンする体を感じる。
コジに指図しつつ、せわしなくタマネギを切りながら俺は思った。
みんなへの説教は、もうしばらく先でもいいかな…と。
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