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「……っ、こーき、もう、やめ…っ」
懇願するような目をする先輩を見ると、愛しさが込み上げてくる。
自然に俺の口の端が、笑っていた。
「どこまででも先輩を追っていきます」
あらわになった肩に触れ、首筋に口付けると、先輩はさっきよりも激しく反応した。
そのうち羞恥心と罪悪感で、その大きな瞳に涙を溜め、かすかに震え始める。
先輩が「拒否をしているふり」とは裏腹に、顔はどんどん上気していった。
「浦正先輩」
何度も夢の中で叫んだ名前。
いつも好きだと伝える前に彼はどこかに消えてしまう。
誰もいない闇の中で、俺は愛する人の名前を壊れるぐらいに叫んでいた。
夢の中でも触れる事さえできなかった。
でも、今は、ここにいる。
俺を見て、俺の声を聞いて、俺のする事に反応している。
待ってた。ずっとこの瞬間を。
体を重ねる瞬間を。
「愛してます」
そっと、先輩の唇にキスをした。
この先に地獄が待っていようと構わないと、俺は思った。
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