たいまつ

7/7
前へ
/35ページ
次へ
「……っ、こーき、もう、やめ…っ」 懇願するような目をする先輩を見ると、愛しさが込み上げてくる。 自然に俺の口の端が、笑っていた。 「どこまででも先輩を追っていきます」 あらわになった肩に触れ、首筋に口付けると、先輩はさっきよりも激しく反応した。 そのうち羞恥心と罪悪感で、その大きな瞳に涙を溜め、かすかに震え始める。 先輩が「拒否をしているふり」とは裏腹に、顔はどんどん上気していった。 「浦正先輩」 何度も夢の中で叫んだ名前。 いつも好きだと伝える前に彼はどこかに消えてしまう。 誰もいない闇の中で、俺は愛する人の名前を壊れるぐらいに叫んでいた。 夢の中でも触れる事さえできなかった。 でも、今は、ここにいる。 俺を見て、俺の声を聞いて、俺のする事に反応している。 待ってた。ずっとこの瞬間を。 体を重ねる瞬間を。 「愛してます」 そっと、先輩の唇にキスをした。 この先に地獄が待っていようと構わないと、俺は思った。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加