帆影

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「…ふーん」 と、たったそれだけの言葉を聞いただけなのに、 俺の体は自然と狂平の服の裾をつかんでいて、 気付けば彼の腕に抱かれている。 わっかんない、わっかんないんだけど、 あんなに疲れていたはずなのに、 本当にもうしたくないと思っていたはずなのに、 狂平にキスをされると、 俺の体は何故か彼を欲しがってしまうんだ。 「知ってる?昨日の俺達を、 よーくんとコジくんの二人は見てたんだぜ?」 うん、知ってる。 揺れる帆の奥で、俺は二人の姿を見た。 必死にこっちに気付かれないようにしてたけど、 一枚向こうの帆の後ろじゃ影でバレバレだ。 しばらくして、曜介の喘ぐ声が聞こえ始めて、 ああ、俺達の姿を見て我慢ができなくなったのだろう、と ぼーっと思っていたのを覚えている。 曜介の声は、コジが理性を失うのも無理はない。 頭をビリビリ痺れさせ、劣情を焚きつける声をしている。 「なに、考えてんの」 狂平の手が俺の頬に触れた。
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