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…夕日が、真っ白だった帆をオレンジ色に染める。
照り付ける日差しも柔らいで、風も涼しい。
全身から力が抜けて、
船の揺れに体を委ねている。
狂平は船の一番後ろに背もたれ、こっちを見て微笑んだ。
「起きた?」
ああ、俺、何度もしてるうちに、
いつの間にか寝ちゃったんだな。
「浦正の寝顔は、いつ見てもかわいーよな」
縛ってたはずの布は、いつの間にかほどかれて
風で飛ばないように俺のベルトに挟まれていた。
手を空に伸ばして見てみると、
俺の手も他のものと等しくオレンジ色に染まっている。
また狂平を見た。
狂平は立ち上がるとこっちに向かって歩いて来て、
すぐ近くに腰掛けた。
今まで体中に触れていた彼の手が優しく頭を撫でると、
なんだか言いようのない幸福感を感じた。
まだ地平線には、何も見えない。
オレンジの空と海が静かに揺れているだけ。
「今度は、四人でしてみるか」
「…!!!なに言ってんだよ、バカ!!!」
俺は、クスクスと笑っている狂平を見つめながら、
俺が一番大切にしている人が、こうやってそばにいてくれる事、
俺の事を好きだと言ってくれてる事の幸せを、
心の中でじんわりと噛み締めていた。
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