窓際の男

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 ゼレンが去って丁度、二年の月日が経った。  セントラルパークは再建され、再び市民の憩いの場になっていた。 「二年な」  茂は、ボケーっと勤務中であるにも関わらず、セントラルパークで戯れる子供達を見ていた。  都合が良いことに制服ではなく、私服勤務なので警察官という身分がばれる事はない。  無邪気に遊ぶこの子達は、二年前にここで何があったのか、知らないだろうな…などと思う。  新京都セントラルパークで謎の爆発、日本に対するテロか?……などなど、様々な憶測が世を駆け巡った。  真相を知るものは、殆どいない。  超人とエイリアンの死闘、そんな事を信じる者は、残念ながら少ない。  その真相を知っている茂は、エイリアンや怪人等と叫び、都市伝説のヒーローを信じる「変人」という事にされた。  だから、彼の扱いは悪い。  配属当初の交番での勤務成績不良、長期の入院、警察官として使い物にならない茂は「新京都警察署防犯活動課」などという私服でパトロールをするという事しかしないような-ある意味では都合の良い-部署に飛ばされた。  その時、茂の携帯電話が鳴る。  年配の--定年間近の--上司だ。 「葛原、昼にいつもの弁当を頼む」 「はぁ、わかりました」  用件のみで切れる電話。  私服で管内をパトロールして昼になれば老人の食事の支度、署に帰れば… 「おぅ、いい台はあったのか?」  と他の刑事に嫌味を言われる始末だ。  パトロールをしているのだから、不良を補導したり、不審者に職務質問をしたりもする、遊んでいる訳ではない、しかし「変人」やそういう人物しか集まらない窓際部署の扱いは、どこでもこんなものだ。
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