窓際の男

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 新京都署に戻り、防犯活動課の狭苦しい部屋に向かう茂を、同じ階にある「総合対策課」の連中が呼び止める。 「茂さんじゃねぇっすか」 「いい台はあったんすか?」  防犯活動課の前にいただけあって、総合対策課には知り合いが多い。  若手警察官を寄せ集めた課で、あらゆる犯罪現場に即応して出動する精鋭部隊、と言えば恰好が良いが実際は、パシリ同然に使われる下っ端部隊。  テレビドラマで言えば、テレビの端っこで働く警察官。  特撮で言えば、怪人にやられる警察官の課…と言った方が正しいかもしれないが、とりあえずは、一番最初の説明を参考にしていただきたい。 「あのね、仕事だよ、仕事、人をパチンコ狂みたいに言うもんじゃない。弁当は老人の食事だ」 「マジすか~?」  なかなか信じてもらえない、普段からパシリ、いや下っ端仕事に忙しい彼らを茂は防犯活動課に連れてきた。 「見てくれ、みんな働いてるぞ」  と胸を張って部屋のドアを開けると… 「あ、葛原さん、おつかれっす」  後輩の吉岡はPSP。 「弁当ありがとうなぎ」  上司の島田は雑誌を読みながら弁当待ち。  しかも、正しくは…ありがとうさぎだ。 「たぁ~、負けた負けた」  と言いながら、部屋に帰ってきた中年巡査長の山科は、完全にパチンコ。 「……すまん」  茂は、総合対策課の後輩に、とりあえず謝るしかなかった。
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