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閑職の茂は、無駄に顔だけは売れていた。
悪い評判で噂は広まり、顔が売れるのは、島田の
｢面倒だ、会議でてきてくれ｣
という一言で各課の集まる会議に出席するからだ。
｢いや、私は巡査なんすけど、一番下っ端ですよ？｣
という、ささやかな講義は島田に通用しない。
｢いいよ、You出てきなよ｣と言われて終わりだ。
連続失踪拉致容疑事件。
新京都内では、約一週間前から十数人の住民が失踪しており、行方不明手配が相次いだ。
しかし、ろくな手がかりもなく、行方不明者の数だけ増えてお手上げ状態になっていた。
何者かによる連続拉致の可能性もあり、今後の対策、捜査方針、などの取り決めのため、会議と相成った訳である。
｢この映像を見てください｣
進行役の刑事がパソコンを操作し、会議室のスクリーンに映像が写された。
｢これは、被害女性が最後に目撃された場所の防犯カメラの映像です｣
防犯カメラは、建物の西側と北側に取り付けられていた。
この被害者は、建物の西側から北側を通って帰宅するらしい。
｢時刻は午後１１時頃、被害者の親族によると、いつも終電近い電車で帰宅すると言うことなので、時間は問題ありません｣
映像の中の被害者は、何も考えずに家路を歩く、ごく普通の様子で、西から北に進んで行った。
｢続いて北側のカメラです｣
映像が切り替わる。
いつまで待っても被害者が歩いて来ない。
｢映らんな、西から東、または南に進んだのではないか？｣
｢南側を写したカメラもあります｣
スクリーンが別の建物に設置されたカメラの映像に切り替わる。
撮影範囲が狭く、建物直近の歩道しか映っていないが、被害者は歩いて来ない。
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