窓際の男

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「東側は?」 「東側にはカメラの設置がありませんでした」  進行役の刑事が申し訳なさそうに答える。 「バカモン!見つけてこい!」  短気で評判の池橋刑事が怒鳴る。 「こんな中途半端なカメラしか見つけられんとは……」  話が長くなりそうな所で不意に誰かが言った。 「東側は工事中で通行禁止です、必然的に東側には行きませんよね、信号もありますし…早く家に帰りたい人が、それに夜中にわざわざ遠回りしますかね?」 「そうか…」  と、恐面の池橋刑事が納得したように頷く。  そこで、池橋が声の主に気付く。 「おい、お前…!」  部屋の明かりがつき、声の主--茂に向かって池橋が怒鳴る。 「防活課のガキが、生意気にほざくな!」  他の署員も面倒だ、と言わんばかりに溜息を吐く。 「お前が会議に出ても何の役にも立たん、出ていけ」 「すみませんね」  ごもっとも、と茂は席を立つ。 「ま、防活課としても情報は欲しいんで、気が向いたら教えてください」 「教える事は何もない」  茂は、池橋や他の署員の視線を背中に浴びながら、会議室を出て行った。  だが、彼としては十分だった。 --いい物が見れた。  場所は変わって総合対策課に映る。 「カメラの映像あるかな?」  茂は、総合対策課の後輩、大杉と西條に先程の会議で使われたカメラ映像が無いか尋ねた。  どうせ刑事やらなんやらから、カメラを見てこいとパシリに使われるのは総合対策課なのだ。 「もちろん、見ますか?」 「あぁ、報酬はコーヒーで頼む」  茂は、賄賂とばかりに西條に小銭を渡し、大杉からカメラ映像を記録したメモリーカードを受け取った。
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