15人が本棚に入れています
本棚に追加
「あぁ、悪い…今日も…あぁ、本当にすまん」
茂は、携帯電話に向かって土下座するような勢いで謝っていた。
「いや、本当にゴメンって…うん、うん…」
謝りつづける茂を、健一は横目で見ながら、パソコンを操作している。
「マジすまん、本当に次はちゃんと帰るから…今日?帰るよ」
いい加減、鬱陶しくなってきた。
この男、彼女がいない男の横で、よく女に電話ができるな。
「あい、あい、あ~い、とぅみまてぇ~~ん」
間抜けな謝罪を最後に電話は終わった。
「…ふぅ、すまん」
「…すまんじゃねぇ」
健一は、カタカタとキーボードを鳴らし、モニターに映像を表示させる。
「見ろ、ユニオンから送られてきた映像だ」
モニターに、どこかのビルの防犯カメラの映像が映った。
中年の男が歩いているが、画面の端、丁度、男が首から下しか映らなくなったところで、男が飛んだ。
「おお!?最近のオッサンは飛べるんか!?」
茂が目を丸くして言う。
「阿呆が、こっちも見ろ」
健一は、モニターに別の映像を表示させた。
今度は、いかにもな真っ黒のセルシオが停まり、中からこれまた「いかにも」なヤクザが出てきた。
「関わりたくない部類の男ですね、わかります」
借金の取り立てに行くのか、携帯電話片手に電話に向かって怒鳴っているようなそぶりを見せている。
その時だった。
「ちょ、おま」
再びの衝撃映像に茂が吹き出す。
あえて、Wは省く。
「テンドンだよね?こりゃ、なんじゃい」
ヤーさんが、宙を舞う。
緊急離脱、と呼んでいいほど見事な勢いで飛んでいったのだ。
「別のカメラでもう一度」
健一がキーボードを操作する。
ヤーさんが飛ぶ直前、そいつが映っていた。
爬虫類を思わせる鱗に覆われた脚、その先端部からは鋭い爪が生えている。
「恐竜か?」
「さぁな、でも生物さ」
更に健一はキーボードを操作した。
最初のコメントを投稿しよう!