窓際の男

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 茂と健一が別れて数分後、二人のユニオンブレスが耳障りなほどに鳴る。 「レーダーに反応があった、すぐに向かえ、場所は……」  現場には、茂の方が近かった。  ジェットストライダーは、深夜のオフィス街を疾走する。  空気中の静電気、走行中に発生する風圧がジェットストライダーのエネルギーになるのだ、普通のマシンとは馬力が違う。  更に…。 「見つけた…!」  摩天楼の狭間を羽ばたくソイツを茂は認めた。  翼長が5メートルもある、恐竜的なシルエットを持っており、獣のような生臭い匂いが漂う。 「よくもまぁ、見つからずにいたもんだ」  茂は、ジェットストライダーを加速させる。 「…変身!」  ジェットストライダーのボディが変形し、車体前後に滑空用のウイングスタビライザーが出現した。  しかし、それよりも、茂の体がみるみる内に変化していく。  まばゆい光りに包まれ、腕が、脚が、身体が、漆黒に染まるように変わっていく。  身体は装甲に覆われ、目に当たる部分は赤いバイザーになり、身体の各所にシルバーのラインが入り、それ以外は黒い装甲に覆われていった。 「行くぞっ!」  茂…いや、改造人間ナノテクター・オニキスは、愛車のジェットストライダーを疾駆させ、翼竜のような怪物を追いかけた。  ジェットストライダーの最高時速は約700キロ、さすがに公道で走るには厳しい速度だ。  それに敵は空、そんな時には飛行機能が役に立つ。  このマシン、短時間なら飛行できるというご都合マシンではあるが、これぐらいの機能が無ければ、逆に不便過ぎる。 「ハァァーーッ!」  ジェットストライダーは、機首をあげ、後部のブーストスラスターで空に飛んだ。  その様子は正直、ロケットの打ち上げに等しいが、ジェットストライダーは、翼竜と同じ程度の高度まで到達した。 「トォァっ!」  雄叫び一つ、オニキスは、ジェットストライダーから翼竜に跳躍し、飛びついた。
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