馴染めない男

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「だから、私は案内しにきたんです」  ジャルードは、ガラスのテーブルに両手を付き、身を乗り出すような格好で瀬戸に迫る。 「私は、あなたを住みよい世界へ案内できる」  ジャルードは、瀬戸の耳元で囁いた。  感じたくもない、オッサンの吐息がかかるぐらいの近さで。 「……え?」  その瞬間、瀬戸はハッと気がついた。  先程までの紳士はいない。  しかし、耳元にはオッサンの吐息を受けた嫌な温もりがあった。 「疲れているんだ、ストレスだ……」  瀬戸は、眠りにつく事にした。  彼が気楽に過ごせるのは、夢の世界しかなかった。  場所と時は変わって、深夜の廃工場。  茂…オニキスが戦っている。  敵は秘密結社ファントムの強化人間--いうなれば、茂の同類だ。 「たぁッ!」  気合一発、オニキスの回し蹴りが蛇を摸した強化人間に決まる。  その威力に蛇怪人は吹き飛ばされ、廃工場内に置き去りにされたコンテナの山に突っ込んだ。 「何を企んでいるのか知らないが…ここで、オマエ達の作戦もお流れだ」  敵の計画を崩し、今回の主犯格も既に倒す一歩前…オニキスの内心は、同類への苦い哀れみと勝利への甘い蜜が入り混じっていた。  オニキスの右手が輝き、光の粒子(エネルギーを放つナノマシン)が発生し、拳を光が包み込む 「…行くぞ!」  オニキスが蛇怪人に向かって跳躍する。 「終わりだッ!」  叩き込まれる光の剛拳、エクストリームナックル。  最大威力12トンの拳を一点に受け、蛇怪人の生体装甲は貫かれ、爆砕した。
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