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「ふぅ、やれやれだ」
オニキスは、一息ついて、茂の姿に戻るとジェットストライダーに跨がった。
さぁ、早く帰らないと夕食……いや、夜食が冷める。
なによりもどやされる。
スタンドを上げ、アクセルを捻る、床の埃を巻き上げてジェットストライダーが走り出す。
しかし、茂はまだ今日の業務から解放されないらしい。
「…! うわっ!」
廃工場を出て、しばらく進んだ時、いきなり人が飛び出してきた。
信号は青、ライトも照らしているから、問題はない。
「ちょっと、危ないだろ!」
茂は思わず怒鳴る。
しかし、飛び出してきた男はフラフラと歩みを進める。
焦点の合わない目で遠くを見つめて、力無く進む様子は尋常ではなかった。
「…?」
今回のファントムの計画は、ありきたりな基地建設だった。
基地の建設着手前に蛇怪人は倒したし、他の怪人が何らかの計画を遂行する様子もない。
考えられるのは、この男が変わっているのか……
「ゴル……エイリアンの仕業か!」
社会現象になりそうな台詞を茂は言う。
「なんつって、変わった人だろ」
と思いたかった、思いたかったのに……。
同じ様にフラフラと歩く者、走り去る者、数人が茂の前を通過している。
「あぁ~~…」
とりあえず茂は、目の前の男に声をかける、今の茂と同じ様にやつれていて、疲れきった様子だ。
「大丈夫ですか、この先に何かあるんですか?」
すると男は、茂の手を振り払い、また歩きだす。
今度は、少し強引に引き止めてみた。
男は、しつこいと言わんばかりに茂を突き飛ばし、血相を変えて怒鳴った。
「必要とされる場所、俺が俺でいられる場所に行くんだ!」
やはり、普通ではない。
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