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崩壊したセントラルパーク、繰り返し起こる爆発、立ち上る黒煙、大きく隆起した地面に耳に響く轟音…。
その様子は、少し離れた小高い丘にある病院から、よく見えていた。
「茂、終わったみたい」
ベッドに横たわる茂は何も答えない。
全身を包帯に包まれている姿は痛々しい。
彼はゼレンらと共に侵略宇宙人や世界的テロ組織、秘密結社ファントムといった驚異に立ち向かう警察官である。
だが、約一月前に秘密結社ファントムに捕まり、改造人間にされてしまったのだ。
改造人間として初めて戦った際に敵を倒しはしたものの、刺し違える形になり、入院となった。
玲奈は、茂に付き添いながら、崩壊していくセントラルパークをずっと見ていた。
その時、セントラルパークの中心から温かな光を放つ球体がゆっくりとした速さで空に浮かんできた。
「あれは…」
玲奈には直感するものがあった。
ゼレン--新垣正樹である。
少し影のある印象で、無口だがその瞳は優しく、地球人以上に地球の平和を愛していた新垣正樹。
その正樹が戦いを終えて宇宙に帰ろうとしているのだろう。
「…」
玲奈は、潤んだ瞳で光を見ていた。
いつも、危ない時は助けてくれたゼレン。
いつも、新京都の--地球の平和を護ってくれたゼレン。
いつも、愛していたゼレン。
そして、いつも自分を愛してくれていた存在に気づかせてくれたゼレンが帰ってしまう。
「……さよなら、ありがとう」
玲奈は、口元に笑みを作り、その光が宇宙に消えるまで、ずっと空を見上げていた。
ゼレンが闇夜に飛び立つ姿は、そこら辺の花火なんかよりも美しいと感じた。
--彼は、星になるんだ
光が消え、元通りの闇夜に戻っても玲奈は空を見上げていた。
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