プロローグ

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「被告人山根優太は三人の人間を無差別に殺し~したため、死刑判決を言い渡す」 裁判所は騒然としていた。 明らかに無罪放免と呼ばれると思っていたはずだった。 なのに判決は何度やっても覆ることなく8年も掛かった裁判は死刑判決で幕を降ろされた。 2008年3月25日、東京都23区内で起きた男女無差別連続殺人事件。 死体はバラバラに公園に放置され、しかもゴミ箱の中に捨てられていたため、その残忍性に世間に注目された事件であった。 犯人逮捕の決めてとなったのは二人目と三人目が殺された別々の公園の近くにたまたまトイレにいたという被告人山根優太。 彼が公園にいたのは、二人目の時は大学の帰りにたまたまトイレに寄っただけ。 そして三人目の時はたまたま友達の家に行ったときの帰りにたまたま寄っただけ。 それだけの理由で状況証拠もないまま逮捕されてしまった。 裁判ではそれらの証拠、証言は完全に覆されると事件の被告人山根優太は思っていた。 マスコミでさえ彼は無罪なのではと言うものもたくさん出てきている。 しかし、いざ裁判が始まると身に覚えのない捏造された証言品の数々、優太の友人と偽る意味不明の証人の登場。 そして最初の殺人でさえいないはずの架空の自分を作らされ、アリバイもあるはずなのに勝手に作らされたアリバイで無くなってしまう。 優太にとっては理解のできないまま裁判は進行して行き、判決は死刑を言い渡された。 もちろん納得のいかない優太は弁護士を変え、新たに控訴、上告と続けた。 しかし、新たに裁判が起こる度に新たに優太自身に不利な証言、証拠が次々に出てきて弁護士もなかなか反論してくれない。 そうやって8年の歳月がすぎて優太も30歳になっていた。8年の歳月は優太の性格さえも変えていった。 誠実で真面目な彼は、一切の人間を信用できずうつの状態になっていた。 活発な青年の顔は、死神にとり憑かれたような、未来のないホームレスのような暗い顔をした痩せ細った顔になってしまった。 「早く死にたい。もうどうなってもいい。」 毎日彼はそれしか言うことしかなかった。
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