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「囚人番号125番。時間です。」
2017年6月29日。山根優太は34歳になっいた。
あの事件からすでに12年以上も経っていた。
絶望と不信感に思いつめた毎日も今日で終わる。
そう思えれば死も怖くない。優太はそう思っていた。
「あの・・・・」
「!」
死刑判決を言い渡されて以来初めて優太は声を発した。
「今まで・・・その・・・お世話になりました。」
「驚いた。お前が話すなんて。」
看守が驚くのも無理はない。死刑判決を受けた直後に優太が移送された獄島拘置所では一言も誰とも会話をしなかった。
死刑囚は死を恐れて発狂したりする人も少なくはない。
しかし優太は今の今まで毎日同じような抜け殻のような日々を送ってきた。だからこそである。
「まぁ、お前みたいなやつはなかなかいなかったな。ほら、いくぞ。」
「はい。」
看守三人に連れられ、優太は死刑台へと向かう。
優太はここに来た4年間よりも死刑台に向かう時間が1番長く感じていた。
死刑台に向かうまでいろんな事を考えていた。
死刑判決を迎える前に死んだ親のこと、友人のこと、そして、自分のことも・・・・
「この部屋に入れ。ここで目隠しをしてもらう。」
そうして、優太の目に目隠しをされた。優太が見た最期の景色は、薄暗い小さな小部屋だった。
そうしていよいよ死刑台に立つことになる。そこには当時の裁判の検事や拘置所長や医師など、いろいろな人が見守る。
「所長。あれが例の・・・」
「しっ。黙ってろ」
「すいません。」
囁かな声は優太にも聞こえている。しかし、優太は今いろんな思い出が蘇り、自分がもうじき死ぬことだけを考えていたため、周りの声はあまり聞こえていなかった。
そうして死刑台に立ち、足を縛られた。
そうして、ようやく首に縄がかけられた。
縄が首から全身に伝う感触はあまり心地よいものではなかった。しかし、優太は天国へと伝うクモの糸のような感触だった。
そうして拘置所長によって静かにそしてゆっくりとボタンを押された。
優太の体は勢い良く死刑台の穴から下へと落ちていった。
そして優太の身体は一本の紐によって宙に浮いた。
優太はぶら下がり衝撃で意識がプツンと途切れた。
2017年6月29日 13時30分。 山根優太 享年 34歳
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