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留華「素性…」
俺が元々、どんな家庭に住んでいたか、どんな生活をしていたか。
京輝「…ま、留華なら感づいてるだろうし、誠さん達だって分かってると思うが…」
留華が心配そうな顔でこちらを見ている。
京輝「俺の両親はもう生きちゃいないんだ」
留華「…」
大して驚いていないから、分かってはいたのだろう。
まず、弥刀岬は俺の故郷だと言ったにも関わらず、何も変化せずに帰ってきたこと。
そして、十数年も家出しているにも関わらず、誰かが俺を探している気配もない。
主なヒントはこれくらいだ。頭のいい留華なら分かるだろう。
京輝「俺の両親はさ、社会的にかなりヤバい人だったんだよ」
留華「…」
難しい顔をしている留華。
京輝「その子供である俺は…法律上存在していないが、存在を確認されてはいた」
つまり、戸籍は無いが、居る事だけは分かっていた。
京輝「――っと、これ以上はマズいかな」
あまり話しすぎると留華まで危ない。それだけは絶対に避けたい。
留華「…」
留華が黙って俯いたまま歩く。何かを考えているのだろうか。
京輝「…はっきり言えば、俺は犯罪者の子供――」
留華「軽蔑とかはしないよ」
俺が問いかける前に、答えが返ってきた。強く、はっきりとした声で。
留華「例え兄ちゃんの両親が極悪人だったとしても、兄ちゃんは兄ちゃんだ。それに―」
一拍置いて、続けざまに投射される疑問。否、確認だろう。
留華「兄ちゃんがそんなに大切に思ってるんだもん。兄ちゃんの両親は、世界から軽蔑されるような人じゃないでしょ?」
花のように、また輝くように眩しい笑顔を俺に向けた留華。
京輝「もちろん―最期まで、俺を守ってくれた人達だ…」
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