繋いだ手

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「……っくしゅんッ」 海辺で遊ぶにはまだ夏は始まったばかりで、薄いTシャツから出た腕が肌寒い。 陽は無言で着ていたジャケットを脱ぎ、あたしの背に掛けた。 「……えっ?!い、いいよっ」 慌てて振り返った先には、陽の優しい微笑み。 彼の笑顔は、暗い夜の闇さえも明るく照らすようで。 「美沙さんが風邪ひいたら、俺の責任だから」 「何でよ?」 「……ん、何でも。いいから着てて?」 月明かりだけしかない夜の海で、ほんの一瞬、彼の頬が紅く染まるのが見えた。 そして、あたし自身の身体も熱く火照っていく。 「……ありがと。借りるね」 その全てをお酒の所為にして、あたしは彼のジャケットに袖を通した。 陽の、甘い香水の香りに包まれる。 「ふっ、美沙さんにはブカブカだねっ」 隣に腰を下ろした陽はあたしの瞳を見つめ、そう言って笑った。
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