繋いだ手

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「……美沙さん!こっち、こっち」 陽があたしを手招きする。 仕事帰りの、いつものBARタイム。 友達を作るのは得意じゃない。 だからいつも一人、カウンター席を陣取っていたあたし。 来る者は拒まず。去る者は追わず。 そんなあたしを、当たり前のように皆が集まるテーブル席へと誘う陽。 自分の隣の椅子をポンポンと叩いて、あどけなさの残る笑顔を零す。 「美沙さん、何飲む?」 「……ビール」 「分かった!すぐ頼むから待ってて」 そう言って、猛ダッシュでカウンターの奥のシンさんの元へと駆けていく。 「……わぁ、陽ちんてば優すぃ~」 確かエリと言う名の常連客が、酔いの回った顔でニヤリと笑った。 こういう空気、やっぱり苦手だ。 「美沙ちゃんだけは特別って感じ~」 「……んな事ないから」 あたしの返事に肯定も否定もする事なく、席に戻って来た陽は柔らかく笑ってあたしを眺めてた。
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