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「美沙さん、行こうよ」
「……」
陽はあたしの手を取り、笑顔を零す。
触れた手の熱に、心が痺れるような目眩を覚えた。
理香子ちゃんじゃなくてあたしに声を掛けてくれた事への優越感?
それとも……
潮の匂いが鼻先を擽って、夜の顔をした海が静かに波の音を響かせる。
結局、シンさんや理香子ちゃん、陽を含めた数人で海辺へ向かい、お酒とつまみを広げた。
用意した花火はかなり盛り上がった。
ロケット花火で競争したり、暗闇の中で打ち上げたパラシュートを追いかけたり。
今年初の、少し早めの花火大会に心が躍る。
理香子ちゃんは、今度は俊輔という美容師の男の子に焦点を定めたらしく、彼の横にべったりしている。
シンさん達は浜辺に敷いた狭いシートの上で、人生を熱く語り始めた。
そして、あたしは誰と話すでもなく、皆から少し離れた浜辺に腰を下ろしタバコを吹かしていた。
「みーささんっ!何してんの?」
振り向かなくても分かる、彼の声。
「……別に。酔っただけ」
打ち寄せる波を見つめたまま、陽に返事をする。
あたしは本当、かわいくない。
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