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薄暗いBARの小さなカウンターで、煌めくグラスに残る氷が人知れずカランと音を鳴らし、溶けていく。
まるであたし達の心のように……
やっと今、あの冬を越えてたどり着いた、暖かい場所。
それはあたしがずっと求めてやまなかった居場所。
大好きな、大切な、陽の隣。
「……もう、見失うなよ?神様は一度しかお願い聞かねぇから」
シンさんはそう言ってケラケラと笑うと、壁に掛けてあったジャケットを羽織った。
「じゃ。俺は愛する娘が待ってるから、帰るな~?」
陽の肩越しに、豪快に笑いながら手を振るシンさんの後ろ姿が見えて。
段々と滲んでいく、その温かい背中。
最高のサプライズを残して、彼はブーツの踵を鳴らしながら店を後にした。
この喜びと、涙と、感謝。
明日、なんて言えばシンさんに伝わるだろう………
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